小学生からの楽しい少子化対策


「煙草って合法ドラッグですよね」
 そんなことを言いながら私は新任教師のT氏とともに職員室に入った。
「あと五分でチャイムが鳴りますね」

 それぞれ担当の教師が授業の用意を始めだしたところで、性懲りもなく教頭が語りだした。
「先日発表があったように、今日の朝のHRでは例の性の授業を行います。いいですか?」
 少し間があった後に、T氏が叫んだ。
「いや、やはり良くないですよ!」
 中には納得のいかない人がいるようだ。当然といえば当然かもしれない。
「小学生に……というのは早すぎますよ。……変なことになったらどうするんですか」
「変なことですか。また変なことをいいますね。それでもよく分かってるではありませんか。……そう、そういえばあなたは新任の先生でしたね」
 そう言うと教頭は笑みを浮かべて何かの用意を始めた。

「あなた、何のために教師になったんですか?」
 知ったかのように別の教師がT氏に向かって述べた。
「そろそろ目覚めなさい」
 その隣にいた貫禄のある定年退職間近の男性教師も立った。

「なんなんですか一体」

 教頭がさりげなくT氏に書類を渡した。
 そしてチャイムがなったのはまさにそれと同時だった。
「よく読んでおいてくださいね。T先生。あなたの活躍に期待してますよ。自然摂理に罪悪感なんていりません」
 それぞれ教師は自分の担任する教室へと向かった。

 それからのT氏を私は知らないが、数分の遅刻で教室に着いた彼は、授業を始めたらしい。

「みなさん、今日の朝の会はいつもと少し違うことを勉強します。このプリントを回してください」
 そのプリントには誰かのアドレスが細かく記載されていた。
「せんせい、これ、だれのいえのじゅうしょですか?」
「今日から、出席番号の順番に一人ずつその住所に書いてある場所に行きなさい。ただし……」

 これは全国の小学校で同時に導入された極秘にして斬新な計画であった。
 書類に書かれていたのはほんの二言か三言の文章のみ。
 古代エジプト人がピラミッドを建てたその頃のように、事実上女子は10歳ほどで出産する生き物だ。
 これは教師に課せられた義務だ。云々。
 そういうことだった。

「ただし、男子と、髪の長い女の子の友達は来なくて構いませんからね」

 数年後、子供の数はあっという間に増えた。
 比例して学力はどんどん落ちていったが、男性教師は夢の職業となった。

 200X年、それは現在も黙認として続いている。

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