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明るい少子化対策 〜たまに双子入りもあるらしい〜


 悪化する一方の地球環境と緊迫した世界情勢、いつ牙を剥くかいつ勃発するか知れぬ天変地異や全面世界戦争に備え、防災の日には国民は自宅にて心の準備をすること、と国が定めて既に数年が経つ。当然ながら会社は休みだし、コンビニも休みだ。
 非常用持ち出し袋の中身のチェックをしている彼女のその横で、床にぐうたらと寝そべっていた俺は見慣れぬ缶をひとつ手にとった。
「なにこれ……子宝缶?」
「うん、今年初めて配られたのよ、非常事態下における少子化対策の一環ですって」
「これ、おでん入ってなかったか?アキバで」
「やあねぇ、子供よ。非常時繁殖用の」
 ふぅん、とうなずいて軽く缶を振ると、かすかにちゃぷ、と水音がした。
「なぁ……これ、開けてみないか?」
 俺の言葉に彼女はギョッとした表情をした。
「ダメよ、非常用だもの」
「かんぱんだって、なんかミョーに食いたくなるじゃねぇか」
 隣に転がっていたかんぱんの缶詰を振ると、カラカラとなんともそそる音がした。この写真の氷砂糖がいいよな、と言うと彼女もちょっと笑ってうなずいた。
「俺ぇ、何が入ってンのか見てみてぇ」
「だめだって。いざって時に使うからこそ……」
「いざ、ってナンダヨ?」
 そんな先ばっか見て生きてらんねぇよ、と俺は言ってさっさと子宝缶を開けた。
「来いよ」
「え?」
「いいから」
 戸惑ったような彼女を組み敷いて俺は自分の子種を彼女の中に放った。
 どうにもそうしたくて堪らなかった。
 なんだか缶の中身を見た時、馬鹿にされたような気がしたのだ。
「非常時繁殖用、ってなんだよソレ」
 小一時間と経たずにハイハイを始めた赤ん坊を手のひらで撫で繰り回しつつ、俺は十月十日後に生まれてくるであろう自分の子供の事を思った。

「いや、うまくいきましたな!なぜか自然出生率までもがばびんと跳ね上がりましたよ!それもこれも首相がかんぱん食べたいだなんて言い出すからですよ!」
「やー、だってさー、食べたいじゃんよ、非常用のかんぱんとかってさ、なんだか無性に。それにおでん缶見た時にさ、ひらめいたっつーか、中、すっげ気になっちゃって。防災の日なんて他にやることないし」
 防災の日にきっとみんな開けちゃうよって言ったじゃん、ビンゴだね!と、水だけで戻せるモチを食いながら無邪気に笑うコハバヤシ首相を見て、この国の将来は安泰だと大臣たちはみな不思議な安堵を感じたそうである。

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