ファチズムといっしょ


 ひどい残業が続き、ヘトヘトで帰宅した。
 出迎えた妻が、凶悪な顔でピンクの封筒を差し出した。
「絶対に断るのよ。許せない。この恥さらし!」
 意味がわからない。暴れる妻を押しのけ、差出人を見る。中央選挙管理委員会とあった。
『ヤッホー。当選です!』
 もちろん立候補などしていない。どうやら35歳以上の男女が選抜される参性権のようだ。
 嫉妬でわめく妻に、あたためていた後ろ回し蹴りを喰らわせる。外に飛び出すと、隣人の鈴木氏も「当選当選」と踊っていた。二人で肩を組み「出産倍増、皇国バンザイ!」と叫び、迎えのリムジンに乗り込んだ。

 まずは所属する性党を決めねばならぬが、俺の性策は決まっている。妻に拒まれたフェチだ。さっそくファチズム党に向かうと、党首の鬼頭あやかがナチの親衛隊姿で迎えた。握手がわりにチチでビンタされ、感極まって卒倒した。
 俺の性務は女を孕ませるに尽きる。多くの性党員が、異性不信、腎虚、脱臼、前立腺炎で失脚するなか、俺と鈴木は見境なしにオールドミスの変態官僚を次々と孕ませ官庁を掌握。どんなにブサイクでも寝床の妻よりマシに見えた。議場でも、反対野党をロウソク責め、木馬責め、ひょーたん責めにする。世界が震撼した乱交国会のはじまりである。
 あらゆる性策をそれこそねじ込み、アニメCG禁止法や税性改革を進めた。
「オナニャーに自由を。ラムちゃんとカイザー様を国民に返せ!」
 腰抜けのONA勢力が台頭し、命を狙われた。我々は、性戯の力で青年無党派層をネオ党員として抱き込み、保守系オナどもを焼き討ちさせた。
 出生率がピンと上がったその直後、
「嫉妬やヒスを起こしません。それにとっても清潔です。清純派A.I.『まじかるユキエちゃん』、禁じ手のHカップで緊急販売」
「しまった。その手があったか!」
 急いで手を打ったが、女性向け「ドンと来いアベちゃん」が市場に乗ってしまった。頼りの親衛隊も、非現実的なHカップや巨根に目が眩み、寝技にやられた。
 わが党は解体され、出生率も激減。俺たちは再起を計るが、不覚にもオーソドックスな清純派とやらに精魂を吸われた。
 居場所をなくした俺と鈴木は数年ぶりに自宅へ帰った。意外なことに、妻は愛想よく迎えてくれた。居間にはアベちゃんがいたが、わずかに埃がかぶっている。
「ねえ、あなた」
 懐かしい妻の匂いに安堵し、なぜかピンときた。
 夫婦こそ究極のフェチだと気づいた。

 出生率は勝手に上がった。

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