こだわりの名前  Ethel


「ジャンヌ!生まれたか!」
彼が入ってきたのと声が聞こえたのは同時だった。

近くにいた看護師が「元気のいい男の子ですよ」と入ってきた父親に告げた。
すると彼は少しがっかりした顔で
「女の子だったらナタリーって名前にするつもりだったのに」
ぼそっとつぶやいて目をそらした。

黒髪でメガネ、小柄で細身の日本人である彼と結婚して今回2人目の子供が生まれた。
彼はユーモアセンスもあるし情熱的で楽しい人だ。

だけど彼には謎が多い。
なぜフランスにきたのかわからない。話してくれない。
そして文化の違いとは言い切れないほど変なところにこだわる。
その一つが女の子が生まれた場合の名前。

そういえばおととし産まれた上の子の名前を決めるときも
「女の子ならナタリー、男の子なら・・・なんにしよう・・・」
と女の子の名前は一瞬で出たのに男の子の名前だけなかなか決まらなかったものだ。
結局産まれたのは男の子。私は「日本語の名前がいいな」と言って、日本語の名前の付け方はよく知らないから、日本人の彼がつけるしかない。
彼は悩んだ末やっと候補が絞れたみたいだった。

そういえば今回もナタリー。
「フランス語の人名単語って数えるほどしかないから、女の子でもやっぱり日本語がいいんだけど。」
「いや、ナタリーがいい」

そういえばなんでそんなにナタリーにこだわるんだろう?
できればそんなありふれた名前じゃない方がいいのに・・・

私のリセ(高校)時代は同じ「ジャンヌ」がクラスに私以外に4人もいた。
5人のジャンヌの中から特定の一人を呼ぶのも大変だった。
だからこそ珍しい名前がいいのに。日本語ならフランスでは珍しいのに。

「なんでナタリーにこだわるの?」
と思い切って夫に聞いた。

「それはな、ジャンヌ・・・話せば長くなるんだが・・・」


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1年後・・・

今度産まれる3人目は女の子らしい。名前は半ば強制的に決まっている。


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文化のお勉強もできる御茶研をこれからもどうぞよろしく!

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